川柳 天根夢草選  ・ 川柳をつくってみよう  

天根夢草 1942年島根県生まれ 1959年から川柳を始める  番傘川柳本社同人を経て「川柳展望」創刊に参画。

注意して花も実も得た進次郎  東ときわ台/宮村順子
大雨の警報が出て注意する   東ときわ台/金田幸枝
免許返納車に注意して歩く   ときわ台/小林順子
デンワ訪問うまい話に要注意  東ときわ台/瀬野圭子
オレオレに注意してても引っかかる  ときわ台/高木光子
ほんとかなネット情報注意する   光風台/松本員子
「熊出没」出たことないが注意する  光風台/岡田重子
注意され聞く耳もたずスマホ持つ   ときわ台/小林泰一
人混みで懐だけは要注意      光風台/四位龍夫
お薬の飲み合わせには要注意    緑が丘/長谷川由紀
サボテンに水のやり過ぎ要注意   ときわ台/松岡悠利子
ころぶなよ室内ばきに要注意    東ときわ台/門 德江
注意して隅隅探す落し物      ときわ台/大杉徳子
点滅し注意促す信号機        大和東/白井育子
何回も渡る信号注意する      光風台/大原和子
公園の目立つところに注意書き   大和東/野中健一
話せないペット注意し様子見る   大和西/樫本真季
偽札か注意して見たことがない   光風台/勝藤 隆
佳・「開」と「閉」注意しないと間違える  長岡京市/西山竹里
佳・細心の注意を払い眉を引く   大和西/小野いつ子
佳・交差点青信号も要注意     岡山市/古徳春奈
佳・つい口が滑る私に要注意    周南市/秋貞敏子
佳・注意して歩く姿がご老人    大和東/石田隆司
佳・万全の注意をしても来る加齢   大和西/小野靖通
秀・銀杏を踏まないように歩く秋   東畦野/秋山 敏
◎次の題「眉」◎10月10日締切◎秀に選ばれた方にクオカード(千円)を差し上げます。

川柳は誰にも作れます。
5音、7音、5音です。俳句と同じリズムです。
音(音節)の数え方も簡単です。日本語は音節数のわかりやすい発音です。一音節ずつ表記されますので、発音しながら指を折って数えていけば間違うことはありません。
あ、か、さ、た、な、は、ま、や、らの各々の行と「わ」「ん」の清音は45音あります。が行、ざ行、だ行、ば行の濁音が20音あります。半濁音は「ぱ」「ぴ」「ぷ」「ぺ」「ぽ」の5音しかありません。以上70音です。
ややこしいのは拗音です。
「きゃ」「きゅ」「きょ」と「ぎゃ」「ぎゅ」「ぎょ」の類です。33音あります。拗音は文字が二つになりますが一音節として数えます。
あと一つ「ー」の長音符号も一音節に数えます。
なるべく基本の5音、7音、5音の定数で一句を作って下さい。
今回の秀作について
「銀杏」は、もちろん「いちょう」ではなく「ぎんなん」です。「注意」という課題で「注意」ということばを入れないで上手に作ってあります。
銀杏を踏まないように歩く道のほうがいいとおもいますが、原作は「歩く秋」でした。

G20終えまだどの国も壁ばかり       東ときわ台/瀬野圭子
分断をしてはならない国の壁          一庫/北川二三男
トランプの壁をみんなで打ち破ろ   光風台/北谷俊子
トランプさんメキシコの壁どうなさる    東ときわ台/門 德江
壁ドンをやってはみたが効果なし   大和東/野中健一
要注意壁に耳あり盗聴器                  光風台/松本員子
災害のブロック塀の脆さかな   大和西/生島伊都子
どの家の壁にもカレンダーがある  光風台/岡田重子
壁紙を替えてトイレは美しい   光風台/大原和子
人生は思わぬ壁が待ちかまえ   小戸/乾 一男
壁のひび塗装勧誘電話くる     大和東/白井育子
壁塗るか塗らぬか迷う齢となる  ときわ台/小林順子
白壁に落書きのある古い家    東ときわ台/金田幸枝
落書きを消してきれいな白い壁  ときわ台/大杉徳子
少しずつ汚れ気付かぬ白い壁   周南市/秋貞敏子
避難する誰もが欲しい壁囲い   東ときわ台/宮村順子
破られるスポーツ界の新記録   岡山市/古徳春奈
リーダーの指図信じて挑む壁   ときわ台/小林泰一
乗り越えることはできない部屋の壁  長岡京市/西山竹里
パンツはく壁にもたれて安全に   大和西/小野いつ子
佳・壁掛けテレビすこし不安で掛けられぬ   光風台/勝藤 隆
佳・見つけると覗きたくなる壁の穴      緑が丘/長谷川由紀
佳・ずれぬよう壁にぴったり置くソファー   大和西/樫本真季
佳・壁際はやりにくそうな掃除ロボ      大和西/小野靖通
秀・刑務所の壁の向こうにある世間      ときわ台/松岡悠利子
◎次の題「注意」◎9月10日締切 ◎秀に選ばれた方にクオカード(千円)を差し上げます。

他人と違う発想
今回の「壁」で秀句になったのは「刑務所の壁」を詠った松岡さんの川柳でした。集句178句の中で「刑務所の壁」は松岡さんの一句しかありませんでした。他人とは違う発想を心がけると、よい川柳になりやすいと思います。

入選しなかった方(全没)は11人でした。
「壁」という課題は、やっぱり「壁」を詠み込まないと、わかりにくい川柳になるようです。
昇り降り自由自在に消防士
という川柳がありました。これだけでは「壁」がイメージできないのではないでしょうか。
微動だにしないヤモリは涼しそう
という川柳もありました。たしかに「ヤモリ」は「壁」に張り付いていますが、課題としては「微動」「ヤモリ」「涼しい」などのほうがぴったりすると思います。
政策の壁の裏側覗きたい
という川柳がありました。「覗きたい」という願望の句です。
「願望」は「可能な願望」と「不可能な願望」がありますが、大体個人的なことなので読者の共感が得られないと思います。
読者が共感する川柳を心掛けて下さい。

儲け

サミットは誰が儲けたのでしょうか  光風台/北谷俊子
大阪に必要なのかIR       大和西/八記勇一
大阪にカジノ作って設けるか   光風台/大原和子
闇市で儲けた人は今いずこ   東ときわ台/金田幸枝
パチンコで儲けた話しか言わぬ   大和東/野中健一
宝くじ坐して儲けを待っている   岡山市/古徳春奈
宝くじ儲けなくては二千万     光風台/松本員子
二千万儲けることはもう出来ず   光風台/近藤 理
武器輸出戦争させて儲けてる    畦野山手/秋山 敏
「儲け」の字信ずる者と教えられ  ときわ台/小林泰一
百均は低価格でも儲けあり    東ときわ台/門 德江
度胸なく儲け話は聴くばかり   東ときわ台/宮村順子
汗かかず儲けた金は身につかず  小戸/乾 一男
汗かいて儲けた金の有難さ    大和西/小野いつ子
儲け口あなただけにという詐欺師  大和西/柳澤静男
信じないすぐ儲かるという電話  周南市/秋貞敏子
いい話に乗って儲けた人はなし  光風台/四位龍夫
不用品儲かった気で持ち帰る   東ときわ台/瀬野圭子
楽しもう残り人生儲けもん    光風台/村上洋美
札束があるかも知れぬゴミの山   大和東/白井育子
佳・節約をすると儲けた気分する   見野/湖東保子
佳・儲かった気分にさせる還付金   大和西/小野靖通
佳・かき氷とても儲かる海の家   ときわ台/松岡悠利子
佳・出張でマイルを増やす人もいる   光風台/勝藤 隆
秀・儲け話にのるなと壁に貼っている  ときわ台/小林順子
◎次の題「壁」◎8月10日締切◎秀に選ばれた方にクオカード(千円)を差し上げます。 課題について
今回の課題は「儲け」です。
他動詞的な「儲ける」「儲けない」「儲けた」。自動詞的な「儲かる」「儲かった」「儲からない」などと作ることができます。
「儲からない」は「儲け」と離れているようですが、「儲からない」という課題が出ることはありませんので、「儲け」の課題のときに作ってもいいのです。
「儲け」という課題は難しい課題です。「損」と比べてみれば判ります。「損」は作りやすい課題です。
読者は優位に立ちたがる者です。読者を「いい気持ち」にさせる川柳は、いい川柳です。そのためには作者が下位に居なければなりません。
読者は、作者が「儲ける」ことよりも「損」をすることを喜びます。
ですから、課題としては「儲け」より「損」のほうが作句しやすいことになります。
作者は高所に立ってはいけません。上からモノを言ってはいけません。いつでも作者は「読者」を立てることがだいじです。 読者が上位で作者が下位に居ることが大切です。
課題(出題)は入選作品のことばの中から採用するようにしています。バリエーションに富んだものにしたいのですが。

学校

跡形もなくなり寂し我が母校  大和西/井口久男
廃校で地域の拠点消えてゆく  光風台/松本員子
クラス会廃校訪ね懐かしむ   光風台/四位龍夫
クラス替えあると別れたお友だち  東ときわ台/宮村順子
ルビの要る児童が多い出席簿   大和西/小野靖通
元気よく行ってきますとランドセル  東ときわ台/金田幸枝
新一年生連絡帳が気にかかる   東ときわ台/瀬野圭子
登校の子供ら守るボランティア   ときわ台/松岡悠利子
学食でいつも待ってた気になる子  ときわ台/小林順子
校門の尊徳像が減っていく    大和西/八記勇一
この年で行けるものなら学校へ  小戸/乾 一男
耐震化して溌剌と学ぶ子ら    大和西/小野いつ子
下校時の子等楽しげに談笑す   大和東/白井育子
学校で芽が出る個性出ぬ個性  大和西/森野三希子
できた学校電車で生徒坐らせぬ 光風台/勝藤 隆
学校出て奨学金に追われてる  東ときわ台/門 德江
学校も先生もみな生きている  光風台/大原和子
五時下校知らせる曲が鳴りひびく  東ときわ台/佃 紀子
学校で教えていない金儲け    ときわ台/小林泰一
教習所鬼教官が夢に出る     東畦野山手/秋山 敏
佳・教室が華やかになる参観日  長岡京市/西山竹里
佳・夏休みの校庭子等を待ちかねる  周南市/秋貞敏子
佳・学校で学んだことは基礎の基礎  岡山市/古徳春奈
佳・学校で教えてくれぬ処世術   大和東/野中健一
秀・学校で習ったとおり生きていく  光風台/北谷俊子
◎次の題「儲け」◎7月10日締切◎秀に選ばれた方にクオカード(千円)を差し上げます。

「柳多留」という本に載っている前句付を古川柳という。
古川柳は、人情を詠ってあるものがあって面白い。
かみなりをまねて腹かけやっとさせは、
「こハい事かなこハい事かな」という前句に対しての付句である。
読み方は、まず付句を読んで、それから前句を読む。
「かみなりをまねて腹かけやっとさせ」「こわいことかなこわいことかな」である。
「腹掛・腹懸」は、今の胴巻きとはかなり違う。
①素肌に着て、胸から腹までをおおう下着の一種。
②子どもの寝冷え予防のために用いるもの。はらあて。
昔の子どもは、寝るときにはいつも「腹かけ」をしていたほうではないだろうか。
子どもの方は、からだをしばられる感じがするのでしたくない。
だから、行水から上がった子どもを追いかけている母親。
「かみなりさまに、へそをとられるよ」と言いながら子どもをつかまえる。
「やっとさせ」て母親は、ほっとしていることだろう。江戸時代のふつうの家庭の風景である。
今なら「目が悪くなるよとスマホやめさせる」ぐらいのところだろうか。

令状はすぐに書こうと思いつつ  光風台/四位好子
メールよりやはり自筆のお礼状  大和西/森野三希子
携帯へメールで届くお礼状     大和東/白井育子
礼状はなるべく早くそれが礼   東ときわ台/門 德江
挨拶が礼儀正しい新社員     緑が丘/長谷川由紀
健康と幸せ祈る即位礼      ときわ台/小林泰一
皇室は礼の角度で意味がある   光風台/村上洋美
新天皇礼儀正しくご挨拶     東ときわ台/瀬野圭子
衿正し上皇様の詞きく      ときわ台/小林順子
起立、礼、小学校を思い出す   大和東/野中健一
虚礼ではない年賀状出している  岡山市/古徳春奈
礼拝堂のステンドグラス神秘的  ときわ台/松岡悠利子
お迎えの車嬉しく礼を言う    東ときわ台/佃 紀子
席譲られ下車時重ねて礼を言う  東ときわ台/宮村順子
ごめんねはなかなか言わぬ国同士   ときわ台/西村大介
合格の電話に頭さげ続け      光風台/岡田重子
無礼講終わってみれば無礼者   大和西/八記勇一
家の中裸で出てもよい電話    光風台/勝藤 隆
礼なくばあやまられても許せない  ときわ台/松林道子
不祥事に決まり文句で礼をする  大和西/生島伊都子
永年のお礼をこめて棺送る    ときわ台/小西智與子
佳・被害者を囲む無礼なレポーター  周南市/秋貞敏子
佳・廃校の母校の門で礼をする   大和西/小野靖通
佳・目礼に気付かなければならない目  長岡京市/西山竹里
秀・返礼をしなくてもよいお年玉   大和西/小野いつ子
◎次の題「学校」◎6月10日締切◎秀に選ばれた方にクオカード(千円)を差し上げます。
666-0111川西市大和東4-1-5
ASAサカタ㈱川柳係宛

川柳が生まれたのは約二百六十年前です。俳諧の「前句付」の「付句」が独立したものが今の川柳です。
「前句」は、今の「課題」のようなものですから、あまり進歩していない、ともいえます。
今の「課題」は名詞や動詞など短い言葉ですが「前句付」のときの「前句」は、7音のくり返しの14音のものがほとんどです。たとえば、
「もっともなこともっともなこと」とか「迷いこそすれ迷いこそすれ」というようなものです。
そのような「前句付」の「付句」を集めて印刷したものが、「柳多留」という本です。「柳多留」は十四篇まであります。
「古川柳」ともいわれていますが、面白いものもたくさんあります。たとえば、
祭前洗ひ粉持ッて連レて行
ですが、今の表記にすると
祭前洗い粉持って連れて行き
となります。
祭りへ出掛ける前に銭湯へ行く母と娘の姿です。石鹸のかわりは糠袋でしたが「洗い粉」は
糠袋よりも上等な品物です。
洗い粉で磨き上げておめかしをするのです。この娘は祭りの踊りに出るのかもしれません。
よその娘に負けないように綺麗にして祭りに行くのです。
母の心理も詠ってあります。